2019年8月28日(水)「関西ライターズリビングルーム」第二十七夜、ゲストは小説家の塩田武士さん。テーマ「令和の時代に『小説を書く』ということ」。無事終了しました。ありがとうございます!
報告が遅くなりました。
8月28日(水)に開催しましたトークイベント型の勉強会「関西ライターズリビングルーム」第二十七夜@北浜フレイムハウス、無事に終了しました。
雨の中、たくさんのご来場、まことにありがとうございます。
今回のゲストは小説家の塩田武士さん。
テーマ「令和の時代に『小説を書く』ということ」
このところの塩田さんの注目度は、がぜん高いです。
グリコ・森永事件を題材のモチーフとし、ベストセラーとなった『罪の声』が2020年には星野源と小栗旬のW主演で映画化。
さらに、最新刊『歪んだ波紋』が11月からNHK-BSでドラマ化が決まっています。
さらにさらにこの日、ある作品のドラマ化の話もしてくださいました。
塩田さんの作品がいま注目される理由の一つに、出版されたあとに、小説の内容と現実がリンクしてゆく点にあります。
誤報やフェイクニュースをテーマにした「歪んだ波紋」は、昨年の8月刊行以来、本文に書かれていることに近しい事件が多発しました。
塩田さん曰く、「それは不思議ではない。徹底的に取材をすることで、未来がどうなるかが見えてくる」。
そう、塩田さんの小説は、事件記者さながらの徹底取材と調査のもとに書かれるのです。
「歪んだ波紋」の最後に出てくる、「記者は現場やで」という言葉。
塩田武士さんの作品がときに「報道小説」と呼ばれるのは、「リアルとは何か」をストイックに追求し続けているからでしょう。
塩田さんは、大学1年の19歳の時に、藤原伊織の『テロリストのパラソル』を読み、小説家になりたいという想いが芽生えます。
そして「小説家になるためには取材の方法をおぼえる必要がある」と、神戸新聞の記者となります。
若手時代に反社会勢力の取材に行かされたエピソードに、お客さんは爆笑。
そして将棋記者時代の経験は、のちに『盤上のアルファ』という作品にもなっています。
しかし、そこからが不遇。
なんと、12年も芽が出ませんでした。
念願の小説家デビューを果たした後も、しばらくは小説家を専業にはできませんでした。
なぜ、12年も小説家になることを諦めずに、想いを抱き続けられたのか。
それは、「豊かさ」の追求、でした。
「豊かさ」とは、経済的な豊かさを指すものではありません。
さまざまなメディアの中で、読者が好きに時間を選べ、読むペースを選べ、そのなかでさまざまな世界へと誘うことができる豊かさ。
それは、小説をおいてほかにない。
その想いがあったからこそ、筆を折ることはなかったと、塩田さんは云います。
ライターの勉強会ですが、小説を書いている、書きあぐねている方が多数お越しになっていたこの日、「書く」という行為が目指すべきものは何なのか、そんな根源的な問いにお答えいただけた今回でした。